結婚するか、しないかの煩悶で

メガネの販売を行っています。
毎日いろんなお客様との出会いがあり、彼女との出会いもそうでした。

「メガネのフレームに傷があるんですけど」

プラスチックのフレームでした。
確かによくみると、ブリッジと呼ばれるレンズとレンズの間のパーツに傷があります。
これはバフがけという処置を行えば新品に戻ります。
そう判断して、「あ、これはすぐに綺麗になりますよ」。
そう言って私は奥にいき、バフがけを行いました。

彼女は納得して喜んでくれ、それからたびたび店に顔を出すようになりました。
そして、彼女の方から「今度どこかにいきましょう」と誘ってきたのです。

私は当時お付き合いしている方も特にいませんでしたし、綺麗な方だったのでラッキーだなと思い、
お誘いにのることにしました。

食事をして、その後部屋に行き、成り行きで……付き合うことになりました。

綺麗な顔立ちの方で、同い年くらいかと思ってましたが、4つ年上でした。
それでも年上だということとか、先輩風を吹かせるとか。そういうことはなく、対等な立場で付き合うことができました。
クリスマスがやってきて、東京に二人でデートに行った時のことです。
彼女が20万円のブルガリのリングが欲しいと言いました。
私はじき結婚する、そこまで考えていたので「じゃ、エンゲージリングということでね」と言って買うことにしました。

そして夜、二人で部屋にいる時に、私から「ねぇ、結婚しようね」といいました。
彼女は「う~ん、考えとくね」と言ってその場を濁しました。
断られた、とも考えられますが。その時の私は、きっと時期をみているのだろうと思ってたのです。

それから2ヶ月ほど経ち、特に結婚の話しもなく、二人で一緒にいることもだらだらとしてきた時です。
なんとなく私は焦りを感じていました。
焦ることはない。けれどもこのままだとずるずる何年も時が過ぎてしまうのではないか。
友人で高校生の頃から付き合って、結局結婚の話を切り出すことができず、ナーナーになっている話しを聞いているので尚更でした。

ある時、私は思い切って言いました。
「結婚はどう考えてるの? 気が付いたら時間がどんどん過ぎてしまう。
もし結婚しないのなら、僕は他の人をはやく探さないといけないから」
この言葉がいけなかった。
その場では彼女は「そうかぁ、早めに結論を出さないとねぇ」と言っていて。
いつも通りふたりだらだらとすごして別れたのですが。

翌日から彼女と連絡がとれなくなりました。
電話しても、メールしても、手紙を書いても、家に行っても、
親に直接話して合わせてくれと言っても。会うことができませんでした。

これが彼女の結論だったんだ。
結婚しない。だから、別れる。

ある意味、さっぱりとした別れ方。けれど、きちんとお別れをしていなかったのには未練が残りました。

彼女とまた話すことができたら……。そう思いながら生活していました。
一方でまた新しい人を探さないと……。そうも思っていました。

どちらにしろ、今の自分にカツを入れたかった。
私は自分を肉体的にいじめるためにも、ストイックに体を鍛えました。

仕事が終わってから毎日走り込み、へとへとになるまで頑張りました。
お陰で気持ちはわりと鬱っぽくなることもなく、テンションも高めだったと思います。

音沙汰なく3カ月が過ぎたくらいで、ふと町中で彼女と再会したのです。
「久しぶり」、彼女もはじめは少し驚いた顔をしていましたが、すぐに緊張が緩んだようで、
「ちょっとやせた?」と訊いてきました。

「ふられてから、鍛えてたからね。よかったら、ちょっと話せないかな」

彼女も少し時間を割いてくれて、別れてからのことなどを軽く話しました。
と、彼女が突然。
「あれ、私たち別れてたっけ?」と言ったのです。

「別れるって、……確かに、言ってはいないか」。

なんだか狐につままれたみたいでした。
こんな復縁もあるのですね。
結局彼女とはそれからしばらく付き合い、別れてそれっきりです。
これもひとつの経験だと思います。

★やったこと
自分磨き、ジョギングをして体を鍛えた